瞼に光を感じた。ゆっくりと目を開けると簾に金色の光が差し込んでいる。

「……朝だ」

 大事そうに愛おしそうに囁く皇子に、そっと頷く。
 __今日も、また一日が始まる。
 それは、当たり前のことではなくとても尊いことだ。
 ゆらゆらと揺れる輿は浜辺で動きを止めると外から心地よい波の音が聞こえる。ここは皆で温泉旅行に来た時に立ち寄った場所。海にはしゃぐ、露さんと時雨さんと五月雨さんの姿を思い出す。塩谷さんも、舎人さんも、皇子も皆笑っていた。

「兎の化身殿」

 外にでて海を眺めていると物部さんから張りのある緑色の葉を渡される。その真ん中には僅かな量の米が乗っていた。

「飯だ」

 昨日は何も口にしていないから、今はこれだけでも有難い。