「戯けたことを」

「それが全てにございます」

 もう一度平伏す姿を中大兄皇子は冷たい目で見下ろす。

「もうよい」

「ちょっと待って! 私達は本当に謀反なんて!」

「黙れ」

「な!? 離して!」

 ジタバタ暴れる私を使用人は引きずるように外へと投げ出す。そして塩谷さんも、舎人さんも、皇子も。

「優花殿。大丈夫か?」

 皇子が心配してくれるけれど私よりも皆の方が心配だ。

「大丈夫。皇子は?」

「私は大丈夫だ」

「塩谷さんは?」

「一発やられました」

 いつもの口調にホッとする。

「舎人さんは?」

「私は大丈夫ですよ」

 振り返ってみたけれど中大兄皇子が襲ってくる気配はない。一先ず安心して立ち上がると私と皇子は物部さんに輿に乗るように即される。