「この世の全ては、この手の中にある。その意味がわかるか?」

 政治の実権を握っているのは、この男。だから誰も逆らえない。この世界にある全てのものは全ての命はその手の中にある。当然、私や塩谷さんや舎人さんや有馬皇子の命も。

「愚か者達よ。話しを聞いてやるだけ有り難く思え」

「何よ、偉そうに」

 聞いてやる?なにを上から目線に。全てはこの中大兄皇子が仕組んだことなのに知らないふりをして。そんな人と話す意味なんて。意味なんて……。と、そこで気づく。
 __そうだ。今この瞬間に意味なんてないんだ。