「ササッと殺されて「はい。終わり」なんて許さないからね」

 皇子の命は私達にとってとても尊いものだと知って欲しい。

「皇子は一人じゃない」

 顔を見合せた塩屋さんと舎人さんが、そっと微笑む。

「そうですよ。有馬皇子様」

「私達もおりますことを、お忘れないよう」

 __生きたい。
 __生きて欲しい。
 こんなにも望んだことはない。
 今まで本気で死を意識したことのない私は幸せだったことを知る。なのに穏やかな日常を「退屈」「飽きた」と、嘆いていた自分が恨めしい。

「すまない」

 皇子が二人ときつく抱き合う。

 “__皆敵だ”
 そんなことない。皇子を心から慕っている人達も確かにいることを忘れないで欲しい。

「露さんも、時雨さんも、五月雨さんも、使用人の人達も、皇子の帰りを待ってるんだから」と、微笑むと皇子がそっと頷いてくれる。

「そうだな」

 私達は自分の意志でこの道を選んだ。だから後悔なんてしていない。死ぬ覚悟なんてできていないけど、この道を選んだことに後悔はない。