暫くすると簾の外では日が沈み、そしてゆっくりとまた日が登っていく。この右手に感じる熱をどうしても離したくない。この幸せを諦めたくない。
 だけど速度を落とした輿がゆっくりと動きを止め地面に下ろされる。
 ハッ。と、顔を上げると皇子は優しく微笑みながらギュッと一度だけこの手を握る手に力を込めた。

「優花殿はここで」

「嫌。私も行く」

 だけどその言葉を無視して皇子は一人で外へと出て行く。

「ちょっと待って! 物部さん! 私も連れて行って!」

「優花殿!」

 止めようとする皇子を押しのけて物部さんに詰め寄る。

「末代まで呪うわよっ!?」

「わ、わ、わかりました!」

 私達を残し、どこかへと消えて行く物部さん。