__松の枝を結ぶ。
 その意味の尊さを私は知らなかった。浜田はいつも言っていたけど理解できなかった。だけど生活して始めて、その意味を理解した。
 便利なあの国で旅なんて簡単なこと。だけどこの時代は歩くしかない。灯りだってないし泊まる場所だってない。女一人では当然歩けないし男の人だって襲われてもおかしくない状態。スマホもないし警察だって呼べない。
 __この時代の旅は命がけ。
 そして皇子みたいに悲しい旅だってある。
 殺されるかもしれない。もう帰ってこれないかもしれない。
 そんな不安と絶望を抱えながら松の枝を結ぶ人だっている。

 __生きて帰りたい。
 その想いをこの枝に結びつける。
 その行為がどれだけ切なく、苦しく、辛いことなのか今ならわかる。