「少しは和らぐであろう」

「……うん」

 その熱に頬をつけながら外で眠る塩谷さんや舎人さんのことを考える。輿の中でも贅沢な状況。二人に申し訳ない気持ちになる。

「……すまぬ。巻き込んでしまって」と、呟くと皇子は私を抱き締める手に力を込める。

「私は自分で好き好んで巻き込まれているだけ。だから今、すごく幸せ」

「……優花殿」

 こんな状況でも皇子がいれば幸せ。そうやって強く抱きしめてもらえることが本当に幸せ。この選択に後悔はしていない。

「少し休もう」

 これ以上話していたら泣き出してしまいそうだから、私は皇子の胸に顔を埋め目を閉じる。規則正しく波打つ鼓動に呼吸を合わせ、微睡んでいるといつの間にか少し寝ていたのかまた輿が動き出す。