闇を睨み付けてまま一睡もできずに夜が明けた。お互いがお互いにもたれかかりながら、ただ過ぎていく景色をこの目に映す。

「藤白だ」

 黒い細長い帽子に黒い靴。 淡い水色の裳に白い袴。その姿を私は見たことがある。だけど信じたくなんかない。そんな偶然があるわけないと自分に言い聞かせる。

「食べるか?」

 皇子はオレンジ色の飴を差し出す。
 __あと二つ。
 袋の中に残った飴の数と自分達の命の期限を重ねてしまい苦しくなる。