「私は、もっと皇子と見たいものがあるの。したいことだって沢山ある」

 一緒に死のうとは思わない。私は生きたい。生きて、どこまでも一緒にいたい。

「……優花殿」

「私を死なせたくないなら皇子も諦めないで」

 揺れる漆黒の瞳を強く見つめる。
 皇子が私を死なせたくはないと思ってくれているとわかるから。それなら私が傍にいれば簡単には諦めないはずだ。

「中大兄皇子のところに行くんでしょ? 私も行く。止めたって引かないから」と、一人で輿に乗り込むと皇子に手を差し出す。重なる大きな手は温かい。
 __生きている。
 それはとても尊いことだ。