__手段を選ばない。
 本当にそうだと思う。 中大兄皇子にとって有馬皇子は何が何でも消し去りたい存在。だけどそんなこと絶対にさせない。

「私も有馬皇子も塩谷さんも舎人さんも、謀反を企ててなんかいない。仕向けようと勝手に騒いでるのは赤兄さんでしょ?」

「ふっ」と、は鼻で笑う物部さんもきっと全てを知っている。

「全部は中大兄皇子が仕向けたことでしょ?」
 
 吐き捨てると、その顔に警戒の色が見える。

「そんなに、有馬皇子が邪魔なの? だからって汚いやり方だと思うけど」

「な、なんと無礼なことを!」

 金属の触れる音がする。

「優花殿!」

 遠くで私を呼ぶ声がするけれど目を逸らさない。逸らしたら負け。その瞬間、刀で切られるとわかるから。