「誰だ?」

 地を這うような低い声に振り返ると、そこには威厳のあるおじさんがいた。きっとこの人が物部さん。

「お前も仲間か?」

「ち、違う! その者は関係ない!」と、皇子が遠くから叫ぶ。だけど物部さんは私から目を逸らさない。

「謀反を企てたのか? あの者達と共に」

「謀反!? いつ私達が企てたって言うのよ!」

 カッとなり声を荒げる。

「有馬皇子様には謀反の心ありと」

「誰がそんなこと!」

「赤兄殿が申された」

 その名前にワナワナと怒りが込み上げる。皇子は一度たりとも頷いてなんかいなかった。痺れを切らしたんだ。謀反を起こすよう仕向けたけれど上手く行かなかったから。この人は赤兄さんの命令でここにいる。だけどその裏には中大兄皇子がいる。