「「え」」

 声を出したのは同時だった。
 その見ず知らずの人は縁側のような所に座って、真ん丸くした瞳でこちらをジッと見つめている。
 __縁側?人?
 クラスメートでも浜田でもない。見たことのない男の子。歳は同じ位だろうか。何か変な格好をしている。

「……兎の化身か?」

 呆然と眺めていると小さく動き出した形の良い唇から澄んだ声が響いた。

 ……化身?と、そこで気づく。どうやら私は、兎の耳のついたパーカーのフードを被っていたようだ。
 それにしても「化身」だなんて、どんなジョークだろうか。

「……あ、いや。これはフードで」

 戸惑いながら口を開くと少し離れた所で青年はせわしなく瞬きをしている。どうやら彼も、この状況に酷く戸惑っているようだ。