「……優花殿」

 泣きながら私に抱きつく五月雨さんの身体を受け止める。その周りに露さんや時雨さん。皆泣いている。だけど私は、まだ泣けない。
 __泣くのは最後だ。

「……ごめん。行かないと」

 五月雨さんの身体をそっと引き離す。そしてこの瞳に焼き付けるように皆の顔をそっと見つめる。

「月に帰らなきゃ」

「い、今にございますか! そ、そんな急に!?」と、取り乱す五月雨さんを一度抱き締める。
 本当のことは言えない。皇子の元に行くといったら、また心配をかけてしまうから。

「ごめんなさい」と、私はいつも三人がやってくれたみたいにひれ伏す。