「誠、愉快だ」

 笑い泣きのはずが、その顔に寂しさが滲むのは何故だろう。

「今宵は宴を開こう!」

 皇子の明るい一声に使用人達が集まってくる。侍女達は、どこからかお酒の入った壺を抱えてやってくる。ガヤガヤと賑やかな中で何故か胸騒ぎがする。
 皇子から目を離せないでいると視線が絡む。優しく微笑みながらこちらに歩いてくる姿が、いつも以上に凛として見えるのは何故だろう。

「優花殿は、やはり飲まぬのか?」

「うん。私は遠慮しとく」

 お酒は飲んだことはないけれど匂いからして苦手だ。

「そうか」と、皇子はお猪口に入った白く濁った液体を飲み干す。

「美味しい?」

「美味だ」

 満足そうに微笑んでいる姿にホッとする。