「皇子様! 優花殿!」

 難波宮に戻ると侍女達が出迎えてくれた。 「ご無事で」と、涙声を出しながら手を握ってくれたのは五月雨さん。「なんとか追い付いたよ」と、笑って見せるとホッとしたのかやっと微笑んでくれる。
「伸びた猫みたいな顔をしていましたけどね」 ふふ。と、隣で笑った塩谷さんの肩を叩く。

「の、伸びた猫ってどんな顔よ!」

「こんな顔でしたよ?」

「な!?」

 塩谷さんの変顔に舎人さんも皇子も爆笑している。侍女達は失礼だと思っているのか笑うのを必死で我慢しているのがわかる。

「別にいいよ。笑っても」と、拗ねたように言うと一番豪快に笑いだしたのは時雨さんだった。皇子は「愉快だな」 と、人さし指で涙を拭っている。