「……皇子」

 そっと手を握る。
 舎人さんと境井さんは寝返ったのか、それとも元々敵側についていたのか私にはわからない。
 だけど悲しい。出会って間もないけれど裏切られたと感じる。ならば私より長く一緒にいた皇子は、もっとその気持ちが大きいと思う。
 私がもっと歴史を知っていたら皇子のことを守れたかもしれない。こうやって傍にいて、こうやってその手を握ることしかできないなんて悔しい。

「脇息を壊す為に出向いたようなものだな」

 唇を噛み締める私の肩に皇子はもたれかかると小さく笑う。その重みにその温かさに、どうしようもなく切なくなる。