「赤兄も、大岩も、境井も。中大兄皇子こそが天だと思っておる」

 その言葉にハッとする。

「大岩さんも、境井さんも?」

 あの違和感は間違いではなかったのだと知る。だけど……。

「いつから、気づいてたの?」

「気づいていたわけではない。最初から信じてなどいなかっただけ。中大兄皇子ならば、そこまですると思っておったからな」

 その言葉に息が詰まる。
 私は、その孤独の大きさをちっとも理解していなかった。
 “__皆敵だ”
 身内もそして家臣も。いや。この人はきっと出会う度に敵だと疑って生きてきた。
 __狙われる身。
 その言葉を私はちっとも理解していなかった。