「赤兄?」

「は、はい」

 赤兄さんが皇子に向かって平伏す。

「悪いことを考えてはならぬ。天は何時も見ておられるのだ」

 __天はいつも私達を見ている。
 皇子の父上の言葉は何時も皇子の心の真ん中にある。そして彼を支えてくれている。凛とした佇まいも真っ直ぐ生きるその姿も。天に恥じぬようにと、それは皇子なりの父への想い。

「私は謀反など起こさぬ。赤兄も思い直せ」

 立ち上がった皇子は入り口で突っ立っている私を見つけると驚いた顔をした。だけどすぐに微笑むとこの手を取り歩き出す。
 この人は、どこまでも真っ直ぐな人。
 赤兄さんに天がありのままの真実を見ていることを、皇子は伝える為にこの場所を訪れた。しかしその言葉は皇子の願いのようにも聞こえた。そうであって欲しいと。そうであるべきだと。