当然大人しくしていられるはずもなく、こっそり廊下を覗くと見張りの女官もいない。私は奥の部屋へと向かう途中うさ耳パーカーの中に入っていた、ボールペンを握りしめる。皇子にもしものことがあったなら戦う覚悟だ。喉元にグサリといこう。
 物騒な発想を抱えて息をのみながら簾の向こうに現れた皇子達の姿を見つめる。そこにまだ赤兄さんの姿はない。

「刀を」

 突然、皇子が言葉を落とす。

「か、刀ですか?」と、戸惑う塩谷さんの手から刀を奪うとトントンと音をたて始めた。