「……あの、皇子」

 おずおずと近づくと、その耳元にこっそりと呟く。

「これ、罠じゃないの?」

 すると「そうだ」と、涼しい顔でキッパリ答えるから呆れる。

「自から罠にかかるわけ?」

 今度は皇子の唇が耳元に触れる。こんな時に不謹慎だけど心臓がトクンと跳ねる。

「罠といっても相手の策にのらなければ良い」

「だけど、赤兄さんが何もしない保証はないじゃない?」

「そうだな」

 そうだなって……。飄々と答えるものだから呆れてしまう。

「しかし、その可能性は無に等しい。今、私を殺しては相手が不利になる」

「謀反を起こしてないから?」

「そうだ」と、皇子が深く頷いたタイミングで侍女が近づいてくる。

「あの、よろしいでしょうか?」

 そうだ、いたんだ。と、思い出し皇子から離れる。すると私は手前の部屋へ。皇子と家臣達は奥の部屋へと通された。