輿が門の前で降ろされ舎人さんが簾を上げる。
すると、どこからかこの前の侍女が表れ皇子は門の中へ足を踏み入れた。だけどすぐに立ち止まり振り返る。塩谷さんがついてこないことを不審に思ったようだ。その瞬間、視線がぶつかる。皇子は口を小さく開けたまま固まった。

「……どうして。知っておったのか?」

 チロッと、塩谷さんを見た皇子に私は慌てて言い訳をする。

「ご、ごめん。私が黙ってるように頼んだの!」

 すると、皇子は思いっきり困った顔をした。 迷惑になるとわかりながらも大人しく待っていることなんてできなかった。