「はぁ……。はぁっ……」

 こんなことなら、体育の授業を真面目に受けておくんだった。と、走りなが思う。
 運動だって嫌い。勉強だって嫌い。あの時代で私は何かに真剣になったことなんて一度もなかった。こんなに誰かの為に一生懸命になることもなかった。

「し、し、塩谷さんっ」

 ちょうど山道の入り口に人だかりを見つけた。その中を掻き分けて一番後ろを歩いているその背中にすがりつく。