「……やっぱり行く」

「どちらに行かれるのですか?」と、時雨さんが優しく尋ねる。私が行かなければならない場所。それは……。

「皇子のところ」

 私には何もできないと知っている。時代も違うし身分だって違う。友達と言っても私と麻美のように何でもさらけ出して話せるわけでもないし、愚痴を言い合えるわけでもない。だけど皇子は、傍にいることを友達になることを許してくれた。ならば……。

「行ってくる!」

 後ろから呼び止める声を無視して走り出す。皇子の元まで全力で。