私はゆっくりと立ち上がる。
 __行ってはいけない。
 頭が警報を鳴らすのに身体は木の葉に誘われるかのようにゆっくりと足が動きだす。
 何か逆らえない力に引き寄せられるかのようにフラフラと歩いて行くと葉の動きがピタリと止まった。
 __見慣れた小さな鳥居の前。
 奥の小さな社殿には藤白坂で亡くなった皇子が祀られている。
 疑問に思っていると、ふと視線を感じた。
 顔を上げると、いつも通り上から皇子の絵が私を見下ろしている。
 黒い帽子に黒い靴。淡い水色の着物のような服を来て、その下には白い袴を履いている。
 その姿は、昔から幾度となく見ているはずなのに今日はどこかが違うように感じるのは何故だろう。絵が突然、変わるはずなんてないのに。