「……五月雨さん。皇子達は、どこに行ったの?」

「飛鳥宮にございますよ?」

「それって、斉明大王と中大兄皇子に拝謁するため?」

「いえ、大王と中大兄皇子様は牟婁の湯に行幸しております故。留守を任されております、赤兄殿にお会いになると」

「赤兄さん?」

「どうやら、ご内密に有馬皇子様にお話があるのだと」

 心臓が嫌な音をたてる。
 どうして皇子は赤兄さんに会いに行ったのだろう。謀反を起こす気はないのに。

「そろそろ中に入りましょうか。風邪を引いてしまいますよ」

「あ、うん」

 五月雨さんに優しく背を押され一緒に歩き出す。確かに身体が冷えている。だけど……。