朝になると準備を済ませた皇子が私の頭をそっと撫でる。

「優花殿。行って参る」

「行ってらっしゃい」

 淡い水色の裳に白い袴。黒い細長い帽子に黒い靴。輿に乗り込むその姿と記憶の奥にある映像が重なる。呆然と見送る私達の前で皇子を乗せた輿が、ゆっくりとゆっくりと進んで行く。

「優花殿?」

 いつの間にか隣にいた五月雨さんが声をかける。