こんな気持ち、未来にいた私は知らなかった。 毎日がこんなにも尊いことを。幸せがこんなにも苦しく悲しいことを。
 __恋が、こんなにも切ないことを。
 しかし知ってしまった私は、もう戻れない。もう、この手を離したくない。それは我が儘なのだろうか。
 目尻からスッと流れる涙を皇子に気づかれないように拭うと「おやすみ」と、声をかける。そして皇子の温もりを感じながら、そっと目を閉じた。