いつものように眠る時間になっても心がザワついて落ちつかない私は紺色の空に浮かぶ青白い光りを眺める。
 今日は満月だ。本当に兎が餅つきをしているように見えるから不思議。

「眠れないのか?」

「ごめん。起こしちゃった?」

 きっと皇子も眠れなかったのだろう。その声は掠れてはいない。
 __どこにも行かないで。
 素直に言えたなら、どれだけ楽だろう。
 __本当は出会うはずのなかった人。
 もうそうやって諦めることはできない。だって、こうして出会ってしまったのだ。
 __離れたくない。
 一度気づいてしまった気持ちを止めることはできない。