サワサワと葉を揺らす音が、周りの音を掻き消していく。そしてザワザワと私の体内を駆け巡り、恐怖という感情を植え付ける。そっと顔を上げると、また音が大きくなる。

 __背後から伸びる大きな楠。

 その枝についた葉が風もないのにユラユラと不自然に揺れている。ジッと見つめていると揺れが隣の枝へと移動していく。 隣へ。また、隣へ。それは、とても不思議な光景だった。
 __私をどこかへ導こうとしている。
 ふと、そう感じた。