「皇子様」

 そっと離れると神妙な顔つきの露さんが部屋に入ってきて平伏す。

「蘇我赤兄さんが、いらっしゃいました」

 その名前にハッとする。思わず隣を振り返ると皇子はただ前を見据えていた。どこか覚悟を決めたその顔に心がザワつく。

「通してくれ」

「かしこまりました」

 本当に皇子の読み通り蘇我赤兄さんは接近してきた。だけどそれは、いいことではない。だって……。