「……二十五日目」

 私がタイムスリップをして、気づくともう三週間が過ぎていた。
 今日は朝から皇子は縁側に座って歌を詠んでいる。 私はその隣に座って同じ景色を眺めている。けどれど、ふと思う。皇子の瞳と私の瞳とでは世界が異なって見えているのだろ。熱を感じる程に近くにいるのに、この人は遠い遠い過去の人。その現実が切なくてたまらない。
 邪魔にならないように、そっと皇子の肩に頭を預ける。それだけで幸せなのに。それだけの日々が、どれだけ尊いことなのか知っている。
 飛鳥時代に生れた皇子と1400年後の世界に生れた私。本来ならば触れ合うことなどできるはずのない人。出会えるはずのない人なのだから。