「春ですな」

「冬だから」

 ポツリと呟く塩谷さんに、すかさず突っ込む。

「お相手はどちらで?」

 興味津々の舎人さんが私にズズイと近づく。

「ち、違うってば」

「違うとは?」

「恋じゃない」

 __恋。
 その言葉に無意識に皇子の顔が浮かぶ。そんな自分が怨めしい。

「そうですか。恋患いではないのですか」と、つまらなさそうな顔の塩谷さんをキッと睨む。