「はぁー」

「溜息ですか?」

 縁側で足をブラブラさせていると後から声をかけられた。顔を上げると、いつものように爽やかに微笑む塩谷さんがいた。
 今日は朝から皇子に用事があると舎人さんと一緒に尋ねてきたのだけれど。

「皇子とのお話は終わったの?」

「ええ。それより、どうかされましたか? 元気がないですね」

「ちょっと、考えごと」

 斉明大王のこと。中大兄皇子のこと。どうしたら皇子を見逃してくれるか足りない頭で考えていた。

「もしかして恋煩いではありませんか?」

 ヒョイッと塩谷さんの後ろから顔を出した舎人さんが突拍子もないことを言う。

「おなごの溜息は恋患いだと教わりました」

 __誰にだよ!
 と、思わず突っ込みたくなる。