「何を言う。充分過ぎるであろう」

 思ってもみなかった言葉に顔を上げる。

「友がいる私は、もう寂しくはない。いつも心が温かい。全て優花殿が私に教えてくれたことだ」

 目の前には無邪気に笑う皇子がいる。
 __寂しくない。
 その言葉だけで私の方が救われる。

「……ありがとう」

「礼を言うのは私のほうなのだぞ?」

 そっと寄り添い合うと互いの熱が一人ではないと教えてくれる。

「今日も月が綺麗だ」

「そうだね」

 だけど、この胸に刺さったままのトゲがチクりと痛む。私は自分の気持ちから目を背けるように皇子の横顔からそっと顔を背けた。