「……後は、アイツがどう動くかだ」

 突然、皇子は前を見据えたままポツリと呟く。

「アイツ?」

「蘇我赤兄だ」

「……赤兄さん?」

 思ってもいなかった名前に驚く。蘇我赤兄さんは前に皇子を尋ねて来たけれど……。

「恐らく近々接近してくるであろう」

「……それって中大兄皇子と蘇我赤兄さんが手を組んでいるってこと?」

「赤兄は中大兄皇子のジュウシンなのだ」

「ジュウシン?」

「重要な職についている家臣のことだ」
 __重臣。
 中大兄皇子が水面下で動いているとは、このことだったんだ。