「じゃあ二十分、ここで自由時間にするぞ」

 やっと課外授業の最後を締める神社参拝の時間がやって来た。
 最初に通り過ぎた神社は〈藤白神社〉と言い、地元では有名な神社だ。何とか天皇が温泉に行く時に建てたとか。そして、藤白坂で殺された皇子を祭っていて十一月には供養祭がある。と、ふんわりとは覚えている。
 境内には作者不明の皇子を哀れむ歌が書かれた石碑があると、麻美が言っていたけれど内容までは覚えていない。

「本当。何度、見ても立派だよね」 と、灰色の大きな鳥居をくぐりながら毎回麻美は言うけれど私には、ただの古びた神社にしか見えない。どんよりとした気持ちで階段を数段上り、今度は天辺が緑色の鳥居をくぐる。すると木造の建物があり、その奥にやっと本殿が現れた。