モヤモヤしたまま難波宮に戻ると小さな宴が開かれた。皇子の病気が治ったお祝いだ。
 担ぎ手の人達はどうやら皇子の使用人らしく今夜は一緒にお酒を呑んでいる。侍女達はひたすら御酌にまわることになっているけれど高校生に酒の席の振る舞い方なんてわからない。ただ遠巻きに見ていることしかできない。

「優花殿も是非」

「あ、私は」

 塩谷さんにお酒の入ったお猪口を渡され戸惑っていると頭上から声がする。

「お前は一人で飲んでおればよい」

 そして私を立たせると自分の横に座らせる。

「優花殿は、そのようなことをしなくてよいのだ」

 「そのようなこと」とは、御酌のことだろうか。遠くでニヤニヤしている塩谷さんを睨みつけると私は皇子のお猪口にお酒を注ぐ。