「一人じゃないからね」

 この熱を移すように、その背に優しく触れる。
 皇子が背負っている何かを悩んでいる何かを、私も一緒に背負うことなどできない。重すぎるし何せ身分が違いすぎる。
 だけど悩んでいる皇子の傍にいることはできる。一人じゃないと伝えることはできる。

「皇子は一人じゃないから」

 パーカーの袖にハタハタと透明な雫が散る。だけど私は見ないふりをした。そのかわりに、この腕でその身体をぎゅっと抱きしめる。そして願った。
 __皇子の悩みも、寂しさも、悲しみも。この熱で全部溶けてなくなってしまえ。