「皇子? いないの?」

 温泉から上がり久しぶりにうさ耳パーカーに着替えた私は、ご機嫌で部屋に入ろうとしたのだけれど中から返事が聞こえない。いないのかと思い、ゆっくりと部屋を覗くと皇子はこちらに背を向け縁側に座っていた。

「いるなら返事してよー」

 ビクッと肩を揺らすと我に返ったように振り返る皇子は私の顔を見てホッとしていた。考えごとでもしていたのだろうか。

「どうしたの?」

「少しな」

 それっきり口を閉ざす。だから私も黙ってその隣に腰掛ける。 言いたくないのなら、言わなくてもいい。だけど、せめて隣にいたい。