皇子達は湯を満喫すると先にお寺へと戻っていく。やっと任務が終わった私は侍女達の真似をして脱いだ着物を近くの木にぶら下げると、ゆっくりと湯の中に爪先きを入れた。全身に広がる鳥肌。久しぶりのお風呂に感動する。
 難波宮では身体を拭くだけだから、こうして湯にゆっくりと浸かれることが今では最高の幸せ。

「気持ちー」

 んー。と、伸びをしていると露さんがクスクスと笑う。

「誠にございますね」

「皇子様の侍女で誠に幸せでございます」と、微笑む時雨さんに五月雨さんも二度頷く。
 どうやら、この時代に温泉とは特別なもののようだ。