「そろそろ参りましょう」

 後ろから優しく声をかけてくれる舎人さんに皇子は頷くと、私達を乗せた輿は山を越え海を越え目的地へと向かっていく。和歌山県にある白浜温泉は未来でも有名な温泉地だけど、この時代の温泉ってどんな感じなのだろうか。

「優花殿。着きましたよ」

 はっ!と目を開けると塩谷さんの顔が。隣にいたはずの皇子は……。

「皇子様は先にご挨拶をしております」

「……そうなんだ」

 自分は輿に乗っていると眠くなるタイプだということを思い知る。