「優花殿」

 優しく肩を叩かれる。
 ゆっくり目を開けると辺りはもう薄い紺色になっていた。

「ごめん。重かった?」

「重くはない。だが見せたいものがあってな」

「見せたいもの?」

 外から掛け声が聞こえると輿がゆっくと下ろされるのがわかる。

「休憩致しましょう」

 そして塩谷さんが簾を上げてくれる。

「ありがとう」

「さあ~」

 皇子に手を引かれて外に出ると頭上には青白い月と金色の星が輝いている。そして目の前には、光りを反射した黒いベールが揺れていた。