少しの休憩をとった後に動き出した輿は、どうやら山を越えたようだ。
 日中になると揺れは穏やかになり思わず意識が微睡んでいく。揺り籠みたいで心地よい。カクカクと定まらない私の頭を皇子が自分の肩にもたれさせる。

「少し眠れ」

 飛び跳ねる心臓。全身がカッと熱くなる。
 だけど皇子の優しい体温に少しづつ心が安らぎ瞼が重くなっていく。ちょっとだけなら。そう自分に言い聞かせながら、私はゆっくりと眠りに落ちた。