暫く呆然としていると途中で輿が止まった。
 皇子に尋ねると、どうやら今夜泊まる宿に着いたようだ。
 外に出ると古い木造の大きなお寺が建っていた。この時代は、なかなか宿もなく寺に泊めてもらうこともしばしばあるのだとか。

「優花殿。お疲れ様です」

 ずっと歩いていた塩谷さんと舎人さんが爽やかに微笑んでくれるけれど、居たたまれない。私はただ輿に乗っていただけだ。

「皆の方がお疲れでしょ」

「そんなことはありませぬよ。慣れています故」と、言う二人に慣れって怖いと思い苦笑する。

「疲れたであろ~う。今日はもう休んでくれたまえ~」

 虚ろな目をした皇子が労いの言葉を言っている中、塩谷さんは何故か笑い出しそうになっている。正直、失礼でしょ。と、小突きたい気持ちを我慢して後ろから歩いてくる侍女達に駆け寄る。

「大丈夫? 疲れたでしょ?」

 しかし三人は柔らかく笑う。

「大丈夫でございますよ? 慣れております故」

 やはり、慣れは怖い。私には絶対に無理だと思うけれど。