それから私達を乗せた輿は森の中をゆっくりと進んでいく。途中で休憩しながらも変わりゆく景色をたまに簾から覗いてみる。
 森の中には目印がないのに、どうやって道がわかるのだろうか。純粋にこんな獣道を輿を担ぎながらそれも迷わず歩くなんてすごいと思う。

「火を」

 側近の誰かがライターもないのに簡単に木に火をつける。すると紺色の世界が温かなオレンジ色に染まっていく。しばらくその光景を眺めていると木々の間から少しだけ斜めになった獣道が現れた。

「……ここ」

 近くに家もないし、あの悲劇の皇子のお墓もない。よく見ていないと見過ごしてしまいそうだけれど、その道を囲む木々は変わらない。
 __1400年前の私の故郷。
 姿は違うけれど懐かしさを感じて泣きそうになる。未来が恋しい。だけど……。