「何、間抜けな顔をしておる」

「……いや」

 ダメだ。昔の人の考え方も体力も理解し難い。

「藤白も通るぞ」

 久しぶりに聞いた懐かしい地名に心臓がドキリと跳ねる。

「恐らく夜には辿り着くであろう」

 もしかして未来に戻れるのだろうか。まさか、このタイミングで……。

「食べるか?」

「……ありがと」

 皇子が懐から取り出した黄色い飴をもらう。口に入れた瞬間、甘酸っぱいパイナップルの味がした。 未来の味。これが私の慣れ親しんだ味だということを思い出す。
 __そうだ。私が生きるのは過去ではなく未来。
 どのタイミングであろうと帰れるのならばそれでいいじゃないか。