「これは、失礼致しました」

「良いのだ~」

 皇子も気づいたのか虚ろな目と間延びした口調に戻る。私はホッとしながら皇子の隣に座って簾が下がったのを見計らい、話しかけようとしたけれど外から聞こえる掛け声に掻き消されてしまった。

「わっ」

 輿がゆっくりと持ち上がり動きだすのがわかる。身体が揺れて思わず隣にいる皇子の腕を掴んだ。

「こ、ごめんなさい!」

 咄嗟に触れてしまった熱から離れると皇子が露骨に不機嫌な顔をする。

「何故、謝るのだ」

 眉間にできた皺がどんどん濃くなっていく。