「私と話しがしたいのだと」と、皇子が鼻で笑う。その様子から、あまり良く思っていないことが伝わる。
 それから皇子は黙り込んでしまった。きっと何か考えているのだろう。私は邪魔をしないように縁側に座ると景色を眺める。
 __蘇我赤兄さんってどんな人なのだろう。

「湯は好きか?」

「へ?」

 突然の質問に振り返ると皇子が微笑んでいる。

「……温泉は好きだけど」

「ならば、行くか」

「え?」

「たまには、良いであろう。皆で行こうではないか」と、言いながら立ち上がると皇子はそそくさと部屋から出て行った。