「試しになんて言われても歌なんて詠んだことないから、わからないんですけどっ」と、口を尖らせていると「己の心を表せばよい」と、また難しいことを言われる。

「……己の心って」

「ならば、優花殿は今何を思っておる?」

 __ドキドキする。どうしようもなくドキドキする。 って、口に出せるわけがない。

「何も思っていないのか?」

 やっと振り返った皇子は、こちらを真っ直ぐ見つめるけれど私は咄嗟に視線を外す。今は顔も見られない。

「お、お腹が空きました」

 内在する、もう一つの感覚に集中すると少しづつ波打つ鼓動のリズムがスピードを落としていく。ホッと肩の力を抜くと大きな音が部屋に響いた。