__キスされる。
 そう思ったけれど皇子はもどかしい距離を保ったまま私を見つめている。
 __もどかしい。
 そう感じている自分に気付きカッと顔が熱くなる。

「今日は私が教えてやる」

 耳元で囁かれ背中がゾクリとする。

「お、皇子?」

 いつもとは違う掠れた大人っぽい声に心臓が爆発しそうだ。

「歌を教えてやろう」

「う、歌?」

「少し待っておれ」

 パッと私の手を離すと、その瞳からその熱から解放される。私はただ離れていくその背中をぼんやりと見つめていた。